出会いは銀幕から1987年2月、私は一枚のチラシを手にした。 それは、映画『ホピの予言』の、東京での上映会の案内だった。 そう、私のアリゾナ、インディアンリザベイションへの道はここから始まったのだった。 「ホピ」「予言」の言葉に興味をひかれ、上京しようと決心した。 が、全盲の私を手引きしてくれるヘルパーが見つからなかった。 「こりゃ縁がなかったんだなぁ・・・」 そう諦めようとしたが、どうも「ホビ」、「予言」の言葉が気になって仕方がなかった。 チラシには、「自主上映」の文字もあった。 「こんなに気になるのなら、いっそのこと、盛岡で上映しちゃおう♪」 と、この映画の製作者、宮田雪監督に電話し、こちらの意向を話した。 宮田監督からは快諾が得られ、7月1日の上映会と決定した。 この時点での私は、アメリカインディアンと知り合え、彼等の住む国へ鍼治療に行くなどといった予感のかけらもなかった。 ここで、「ホビの予言」について話しておきたい。 ホピとは、ネイティブアメリカンの一部族の名前で、「平和」とか、「平和の民」とかの意味をもつ。 彼等は、アリゾナ州の北部、グランドキャニオンに近い場所で、文明がもたらす便利さという恩恵を拒否し続けている(私が訪れた当時でも、2割ほどのネイティブが、伝統適スタイルで暮らしていた)。 この、ホビ族に伝えられている教えが予言となっている。 この教えの中には、第一次、第二次世界大戦、ナチスのシンボルマークのハーケンクロイツ、それに、日本への原爆投下が予言されていた。 そして、その教えは、我々が、現在の物質優先の文明の道を歩むなら、それは人類の破滅の道となるであろうと予言している。 この映画は、そのホビの予言を中心に、物質文明および経済最優先がもたらした地球上の破滅的現象を紹介し、次に生まれてくる子供達のために、私たちは、これからどの道を選択すべきか、ホビ族の伝統的な暮らしや教えを交えながら、問いかけたものである。 この映画で、私が共感した点は、 「人間は生き物の中で最も弱いので、4本足の兄弟、翼ある兄弟、水に暮らす兄弟、緑の命ある兄弟姉妹が、自らの生命をなげうって、我々を生かしてくれている」という点である。 その弱い人間が、全生命体の中で最も強いと錯覚して、母なる大地を傷つけ、空を汚し、水を汚し、全ての兄弟姉妹を傷つけ、殺し、今でわ、自らの命さえも終わらせようとしている。 今、我々が豊かさと言うとき、それは物質面であり経済的なものをさす。この地球上で、最も弱いのが人間なんだと自覚していたら、豊かさというものが今とは違っていただろし、これほど劣悪な環境の地球に追い込むことはしなかったと 思う。 このような中にあって、人間が生きてゆく上で大切なものは何かを、しっかりと見定め、生きている人々がいる。 できれば、彼等にあって、この身体で彼等の生き方を感じてみたい。 と、上映会が近づくにつれ、私は考え始めていた。 |